“クラウド” という言葉はちょっと前まではあまり好きではなかった。 その言葉に対しての実体がイマイチイメージがつき辛く、ボンヤリしたものであったためだ。
(なんちゃって)コンサルタントの方々がその言葉を口にして、予算を握っている方々に、 “クラウド” という言葉通りのボンヤリとした絵の書かかれたスライドを片手に、 もっともらしい話をしているのを各所で聞いていた影響もあるのかもしれない。。
ただ、最近はサービスの実用化が進んでおり、個人的にも興味を惹かれ始めていることもあり、現実的な話がアンテナにひっかかってくるようになった。
HotPads が示した AWS の具体的な利用例とそのコスト
この記事は結構インパクトがあった。
上記のスライドの中で、サービス規模、システム構成、実際にかかっている月々のコストが具体的に示されている。
運用しているサービスの規模としては、
- 800,000 訪問者/月
- 4.5 百万ページビュー/月
- 日々アップデートされる 3.5 百万件の不動産情報
となっている。めちゃくちゃ大規模というものではないが、かといって小規模という枠でもない。
上記スライドの内容をうまくまとめてくれているコラムが以下のコラム。
上記からコストの詳細部分を引用する。
Costs
・EC2 - $7400/month - run 20 of various size instances at anyone time. Most work is in the background processing of images, not web serving.
- $150: 2 Small HAProxy Load Balancers - 2 for failover, these have the elastic IPs, round robin DNS point at the elastic IPs.
- $1,200: 3-5 Large Tomcat Web Servers - an array of 3 run at night and 5 during the day.
- $1,500: 5 Large Tomcat Job Servers
- $900: 1 X-Large 1 Large Index Server - used to power property search and have several GB of RAM for the JVM
- $1,200: 1 X-Large 2 Large MySQL masters
- $1,200: 1 X-Large 2 Large MySQL slaves
- $300: 1 Large Messaging Server ActiveMQ - will be replaced with SQS
- $300: 1 Large Map tile creation servers Tilecache
- $600: Development/testing/migration/ servers
・S3 - $1500/month - few hundred million objects for files for maps and real-estate listing photos. 4TB of database backup stored as EBS diffs ($600/month).
・Elastic Block Storage - $500/month
・CloudFront - $460/month - is used to serve static files and map files throughout the world. It serves static files, map tiles, and listing photos.
・Elastic IP Addresses - $8/month
・RightScale - $500/month - used for management and deployment.
現在 100 円 を切っているが、1 ドルを 100 円計算とした場合、約 110 万/月で上記のサービス規模、システムを稼動させている。
金額だけの観点からいくと、以前プロバイダに支払っていた金額と同じ金額だということだ。このコストについて、同じコラムで Todd Hoff 氏は以下の感想を述べている。
I found this is a little surprising as I thought the cloud would be more expensive, but they only pay for what they need instead of having to over provision for transient uses like testing. And some servers aren’t necessary anymore as EBS handles backups so database slave servers are no longer required.
私にとってはこのことはちょっとした驚きだった。クラウドはもっとコストのかかるものだと思っていたのだが、テスト環境のような一時的な利用における備えをしておく必要はなく、それが必要な時に必要な金額だけを払えばいいのだ。また、(実際の運用では必要になる)幾つかのサーバはもはや必要ないのだ。例えば、EBS がバックアップは行ってくれるので、スレーブのデータベースサーバはもはや必要なくなっている。
(括弧内の言葉は自分の方で補記した。)
この HotPads の例から学んだこととして、“Lessons Learned” の項の中で Todd Hoff 氏は幾つか挙げている。印象に残ったところを。
・Overall cost is about the same as with previous hosting site but the overall speed of development and ease of management is night and day different. Getting more servers and lots more flexibility.
・全体のコストは、以前のホスティングサイトとほぼ同じ。だが、開発のスピードと管理の容易さは、夜と昼ほどの違いがある。より多くのサーバを得られて、より多くの柔軟性を得る。
インフラのスペシャリスト達が作ったプラットフォームで、そのプラットフォームの運用は任せられる。 ソフトウェアと同様、インフラ部分においても大変なところは初期の構築はもちろんだが、その後の運用。 当然ながらコストの中には”もの”だけではなく、人件費(その人間力/技術力含めて)のコストが含まれる。
セキュリティ、もろもろの規定含めて考えないといけないところはあるかと思うが、PaaS (Platform as a Service) という**“クラウドサービス”**はとても魅了的に映る。
これまでのように、3 年後、5 年後にはシステム開発のあり方はまた変化しているのだろう・・・と思わざるを得ない。その手法だけでなく、業界の構造としても。